強迫性障害

(OCD: Obsessive Compulsive Disorder)

心療内科・精神科
東京都中央区日本橋人形町1-1-21人形町ビル3F


強迫性障害の症状経過

強迫性障害の説明図

強迫性障害とは


強迫性障害とは、どんな病気ですか?

 強迫性障害とは、従来は強迫神経症と呼ばれていたものですが、現在は不安障害という不安を中心とした障害のひとつとなっています。不合理とわかっている考えやイメージ(強迫観念)が自身の意思に反して繰り返し浮かび、不安、恐怖を引き起こす。さらに不安、恐怖を和らげるための行為である強迫行為を繰り返し行なってしまう障害です。これらは、不合理性から患者様ご自身を苦しめるばかりではなく、強迫行為により時間の浪費をまねいたり、強迫症状が引き起こされる状況を回避したりすることよって社会生活を障害します。

強迫性障害ではどのような症状がみられますか?

 強迫性障害の症状は、不安を引き起こす強迫観念と不安を和らげる強迫行為によって構成されます。最も多い強迫観念は汚染に関するもので、他人の便、尿、唾液や細菌などで汚れ、その汚染が接触によって広がっていくという考え(汚染恐怖)が生じて不安となり、その不安を打ち消そうと繰り返し手を洗ったり、何時間も入浴したりします(洗浄強迫)。次に多いのが疑念に関する強迫観念で、戸締りや火の元が確実にできていないのではという考え(不完全強迫)が生じて不安となり、その不安を打ち消そうと繰り返し何度も戸締り、火の元を確認したりします(確認強迫)。3番目に多いのは、不謹慎な性的あるいは攻撃的行為についての考えや空想が繰り返し浮かぶというものです。表面的には強迫行為は見られないものの、実際は頭の中で何度もお祈りやおまじないをするなどの打ち消す操作を行なっていることが多いです。4番目は、対称性、順番などの正確さに関する強迫観念で、対称性、順番、数などにこだわり、並べ替えたり、やり直したりなどで時間を浪費するというものです。

症状が社会生活におよぼす影響はどのようなものがありますか?

 強迫性障害になると、強迫症状による時間の浪費や強迫症状を回避することにより、対人技能や職業能力が低下し、人間関係を保てなくなります。その結果、自信と社会的能力を低下させます。また、強迫行為は、本人も恥ずかしいと思っており、隠れてこっそりとしていることが多いのですが、症状がひどくなると、家族に掃除を頻回にもとめたり、一緒に確認を何度も求めたりと、家族を巻き込むようになる(巻き込み型)ため、家族の負担も重くなり家族の生活にも影響がでます。

どのような人がなりやすいと考えられていますか?

 以前は、完全主義、秩序を重んじる、仕事熱心、頑固などの強迫性人格障害などとの関連が指摘されてきましたが、現在は否定的とされています。脳の機能性の障害と考えるべき疾患です。

発病するきっかけとしてはどのようなものがありますか?

 強迫性障害の多くは突然発症します。しかしながら、多くの患者さんがストレスとなる出来事の後に発症すると考えられています。女性の場合は、結婚、妊娠、出産、子育てなどによるものに注意が必要です。

強迫性障害の原因としてはどのようなことが考えられていますか?

 原因としてはセロトニンという神経伝達物質の調節障害という考えが有力ですが、ドパミンをはじめとする他の神経伝達物質の関与も考えられています。脳の特異的部位の機能障害も関係していると考えられており、最近の画像検査では、脳の前頭葉、大脳基底核や帯状回という部分の活動性の異常も原因として指摘されています。

どの位の人が発病するのでしょうか?

 約2%~3%との人が、一生のどこかの時点で強迫性障害になるのではないかと考えられています。20歳前後で発症することが多く、男性は20歳より前に、女性は20歳より後に発症することが多い傾向にあります。発症頻度については、男女差がないとされています。

強迫性障害を疑ったらどうしたらよいのですか?

 不潔恐怖・洗浄強迫の場合は、手洗い、入浴、トイレの時間が異常に長くなり、手あれ、水道代が高くなる、紙の消費が多くなります。不完全恐怖・確認強迫の場合は、戸締り、火の元の確認が頻回で時間がかかり、遅刻するなどが現れます。以上のように、ものごとの優先順位が乱れ、強迫行為に一日一時間以上を費やすようになり現実の生活ペースに影響してきたら、早期に心療内科・精神科の専門医を受診するのが良いと思います。

家族や周囲が気づいた場合はどうしたらよいのですか?

 まずは患者様の苦悩に関心をもって聞いてあげ、苦悩に理解としめし、勇気づけてあげる必要があります。その上で、早期に心療内科・精神科の受診をすすめるのがよいと思います。患者様から確認など強迫行為に協力をもとめられることもありますが、かえって症状の悪化につながるため、その旨を説明して協力しないようにしてください。

強迫性障害にはどのような治療がありますか?

 強迫性障害の治療の中心は、薬物療法と精神療法の一つである行動療法です。以前はクロミプラミン(アナフラニール)という三環系抗うつ薬の治療が中心でしたが、口渇、便秘などの副作用のため継続困難なことが多いという問題がありました。現在は、副作用が少なく、クロミプラミンと同等の効果を有するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:デプロメール、ルボックス、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ)による治療が中心です。副作用は、服用開始時の胃腸症状(吐気、胸やけ、下痢など)、眠気が主で、ほとんどの方が違和感なく服用できます。効果が現れるまで、4週~6週、最大効果までには8週~16週は見る必要があるので焦らず服用することが大切です。服薬中止による再発率は高いため、少なくとも1年以上は薬物療法を継続する必要があると考えます。
 精神療法の中で、治療効果が最も高いと考えられているのが行動療法です。その代表的なものとして、曝露・反応妨害法があります。曝露とは、強迫観念を誘発する刺激に直面し体験することで、反応妨害とは、強迫観念によって引き起こされた不安や恐怖を打ち消すために行なう強迫行為(反応)を、言語的、身体的指示によって防ぐことです(妨害)。これは、引き起こされた不安や恐怖は時間ととも軽くなること利用したものです。強迫観念を誘発する刺激に長時間さらされることで不安は消失し、刺激になれるということを、患者様に実際に体験してもらい、強迫行為の必要性を低下させることを目的としています。具体的には、患者様に強迫観念を誘発する刺激を、誘発する程度の軽いものから段階的に体験していただき徐々になれてもらうというものです。また、曝露・反応妨害法は病院だけでは効果が不十分なので家庭でも毎日実施する必要があります。この治療法は薬物療法と同等の効果を有しており、患者様ご自身が治療者でもあるため効果はより持続的と考えられています。ただし、この治療には患者様の高いモチベーションと治療者との信頼関係が必要となります。当院では、患者様の回復を第一と考えて、森田療法、認知療法、行動療法の要素を自由に取り入れた精神療法を行なっています(当院の精神療法および拙著「いつもの不安」を解消するためのお守りノート(永岡書店)をご参照ください)。